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与論島クオリア
  最終更新日 2018-4-19 6:01:31
要旨 喜山荘一 《与論だけの“あの感じ”を言葉にする》《与論・奄美・沖縄(琉球弧)の“同じ”を発見する》
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言語 ja-JP
オウギガニ(大当原期)段階の貝比較
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要旨:  オウギガニ段階(大当原期)にある貝類を比較してみる。平安山原遺跡の?群上層のみ...

 オウギガニ段階(大当原期)にある貝類を比較してみる。平安山原遺跡の?群上層のみは、ぼくの判断になる。

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 同じ段階にあると言っても、5地点に共通するのは、シラナミ、マガキガイ、イソハマグリ、ヒメジャコ、クモガイ、リュウキュウサルボウ、リュウキュウマスオ、オキナワヤマタニシ、ニシキアマオブネの9つのみだ。

 なかでも、いわゆるオウギガニらしい貝を当てられない。どれも名だたる貝たちばかりだ。9つの貝のなかで、地点内ではもっとも構成比の低いものが、9つのなかではもっとも高いのはヒメジャコで、これは名だたるなかではオウギガニらしさ(小さくて岩のなかに収まっている)を見せている。

 4地点で共通している貝は、サラサバテイラ、シャゴウ、オニノツノガイ、エガイ、コオニコブシ、カンギク、ギンタカハマ、バンダナマイマイ、ハナマルユキ、ハナビラダカラ、アマオブネの11になり、一気に増えるわけではない。しかし、オウギガニらしさは出てくるように見える。

 サラサバテイラ、ギンタカハマは、鋏に似ている。コオニコブシ、カンギクは、小さくて尖りがあり、カニとの類似を見せる。ハナマルユキ、ハナビラダカラは、背面の柄や殻口の形が似ている。

 共通する地点が3つ以下の貝類で特徴的だと思えるのは、宇堅に多いヒザラガイで、これはオウギガニの腹節を捉えていると思える。しかし、それは、シオマネキ段階にもさかのぼれるものかもしれない。宇堅のアコヤガイ、ナガラ原東のミドリアオリは、オウギガニの扇形が捉えられていると思える。

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 同じ段階にあると見なされながら、これだけ共通性が低いのは、ひとつには環境による規制が大きいためだと考えられる。そしてそれとは別に、同じ段階とは言っても位相がだいぶ異なる、ということではないだろうか。

 宇堅は、アラスジケマンが約8割と圧倒しており、干潟の構成比が高い。ヒザラガイやアコヤガイなど、オウギガニらしさの兆候もあるが、これはシオマネキ段階にあると見なした方がいい。

 安田は、山がちな環境とはいえ、2割を占めるオキナワヤマタニシを考えると、すでにヤドカリ段階への移行が進んでいるのではないだろうか。

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 そこで、宇堅、安田を除き3地点で改めて比較すると、3地点で共通する貝類はぐんと増える。すると、ヤナギシボリイモ、クロチョウガイ、イトマキボラ、ホシダカラ、ツノレイシなど、オウギガニらしさとして言うことができる貝も増えるようだ。

平安山原B・C遺跡の位相 3
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要旨:  実は、貝類からカニトーテムからヤドカリトーテムへの移行と見なした層は、報告書の...

 実は、貝類からカニトーテムからヤドカリトーテムへの移行と見なした層は、報告書の判断と異なっている。?群をヤドカリ段階と見なすのは同じだが、?群下層は報告書ではカニ(大当原)、貝類からはヤドカリ(アカジャンガー)、?群上層は報告書ではヤドカリ(アカジャンガー)、貝類からはカニ(大当原)で、反対になっている。

 地層は下から上へとなるのだから、報告書の方が自然だとは言える。

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(『平安山原B・C遺跡』から作成)

 この遺跡は、貝塚時代後期から戦前まで断続的に生活の場とされていて、ために「人為的な攪乱を受けて」いて、砂地ということもあり、「上層の遺物が下層に紛れ込んだ可能性が高」いと指摘されている。

 土器片の構成からいえば、?群下層にアカジャンガー(ヤドカリ)の土器が紛れ込んだという理解になる。

 しかし、貝類によれば、?群下層は、?群ほど明瞭ではないが、ヤドカリトーテムへの移行を示していた。これをどう理解すればよいか。

 ここで、「人為的な攪乱」の要素を重視すると考えられなくなるので、脇へ置いてみる。報告書でも貝類からもヤドカリ段階と見なされる?群でも、優勢なのは、カニトーテム(大当原)の土器だ。これは、トーテムを表現する土器形態を得るまでは時間がかかることを意味しているのではないだろうか。そうだとすれば、?群下層でヤドカリトーテムの土器は少ないけれど、貝類はヤドカリトーテムへの移行を示していると捉えるのは矛盾していない。

 しかしそうすると矛盾するのは上層の方で、カニトーテム段階と見なしたのに、ヤドカリトーテム段階の土器は、下層よりも多い。

 これは、下層の集団と上層の集団は異なっていたことを意味するのではないだろうか。つまり、下層ではヤドカリトーテムの集団が生活していた。しかし上層では、カニトーテムの集団に変わったと見なすのだ。

 トーテムとしてのヤドカリの意味は、性交と妊娠の因果の受容だから、カニとヤドカリの共存の段階はあっても不思議ではない。

 黒住耐二は、この遺跡では干瀬の貝が少なく、クチも少数だと指摘している。しかし、礁斜面のゴホウラが集積されるだけでなく、アツソデガイ、大形ナルトボラ類、マンボウガイ等の死殻も得られていることから、「人々の側の交流の程度」が大きかったと想定しているが(「平安山原B遺跡と同C遺跡の貝類遺体および本地域の遺跡出土貝類まとめ」)、これが下のヤドカリ、上のカニの背景なのではないだろうか。

 試みに貝製品の出土状況を見てみる。

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 ?群の下層と上層について、製品の構成比の差をみると、螺蓋製利器と貝匙、自然貝について、ヤコウガイが高まっている。ヤコウガイは、ヤドカリ貝だから、下層がヤドカリトーテムの段階にあることを傍証しているように見える。有孔製品で減少が著しい二枚貝は、「放射肋族」なのではないだろうか。
(『平安山原B・C遺跡』から作成)

平安山原B・C遺跡の位相 2
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要旨:  より詳細にみるために、貝を科ではなく、似たものでまとめてその推移を辿ってみる。...

 より詳細にみるために、貝を科ではなく、似たものでまとめてその推移を辿ってみる。

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 ここで、族としてまとめているのは、見た目の類似によるが、まだ細分したり厳密にしたりする余地を残している。

 もっとも上昇している砂族は、砂場に限らず岩場にもいる二枚貝を含めている。このなかで上昇著しいのがイソハマグリだ。目立たないが、小さく伸びているのは、ナミノコマスオとリュウキュウナミノコ。

 下降しているのは、岩場の二枚貝でカワラガイ、ホソスジイナミ、ヌノメガイ、リュウキュウサルボウだ。どれも放射肋が目立つ。ただ、ヌノメガイは成長肋が目に入るので、他とは違う理由があるのかもしれない。

 放射肋が目立つものでまとめているのが、アラスジ族で、アラスジケマン、カワラガイ、ホソスジイナミ、リュウキュウサルボウ、リュウキュウマスオになる。

 放射肋の目立ちが捉えられているのは、シャコガイとの類似によるものだ。ということは、これらの貝は、放射肋と成長肋の目立ち方で分けるのがよいと思る。ただ、ヌノメガイの場合のように、成長肋が目立っても減少しているものがあるのは、殻表面が滑らかであるかどうかに依っているのかもしれない。それは、ヤドカリの腹部が柔らかであることに対応している。

 放射肋族
 成長肋族
 スベスベ成長肋族

 オウギガニの段階では、ヒメジャコが優占することが多いので、ヒメジャコ族としているが、シャコガイのことだ。シラナミ、ヒメジャコ、シャゴウ、ヒレジャコのどれも減少している。これはそのまま放射肋が目立つ貝の減少と呼応している。これは、カニの腹部では腹節が目立つのに対して、ヤドカリの腹部がスベスベしているのに対応している。ただし、ヤドカリも貝族なので、関心が消失するわけではない。このなかでは、ヒレジャコの減少幅は小さい。

 この遺跡では、マングローブの主であるシレナシジミが登場しないが、シレナシジミは成長肋が目立つが、スベスベはしていないので、成長肋族に入るとみなしておく。

 蓋族としたのは、貝の蓋が石灰質などでできて硬質で、貝そのものと見なされたものを指している。チョウセンサザエの蓋は微増、ヤコウガイの蓋は微減、カンギクの蓋は増加している。これらの傾向は、蓋そのものへの関心は持続し、ヤドカリとの関連が捉えられたものが増加していると考えられる。

 丸族としたのは、アマオブネやマイマイなど、小さくて丸っこいものを入れている。オキナワヤマタニシ、バンダナマイマイ、カンギク、ニシキアマオブネ、カツレンマイマイ、アマオブネで、カツレンマイマイ以外はどれも増加している。ヤドカリの宿貝になることが増加の背景にあると考えられる。

 巻貝は、カニの鋏と見なされるので、大きく鋏族とした。「▽鋏族」としたのは、円錐の形をして、殻口が錐の方にあるものだ。

 微増の傾向を持つのは、アンボンクロザメ、ナンヨウクロミナシ、サラサミナシ、ゴマフイモだ。どれも長めの貝であり、オウギガニよりヤドカリの方が、鋏が長いとみなされたことに依る。カバミナシは長めだが微減している。赤みを帯びた黄色がヤドカリと似ていないとみなされたのかもしれない。

 それはマガキガイがもっともよく示している。カバミナシだけではなく、イボカバイモやヤナギシボリイモも、長い鋏なのに減少している。もともと、ヤドカリも鋏だけ取ってみれば長いとは言えない。マガキガイはなぜ横ばいになるものの、減少するのだろう。

 それは、ヤドカリが宿貝から顔を出している部分が男性と見なされたことに依るのではないだろうか。そこで、赤系の色であるマガキガイは減少し、それが希薄なアンボンクロザメが微増する理由になっている。それとともに毒を持つことも男性性の強い要素だった。

 マダライモ、ジュズカケサヤガタイモ、イタチイモ、イボシマイモなどは、短い鋏で、オウギガニがトーテムとして去るのに合わせて採られなくなっている。

 「▽鋏族」については、色と長さで選択されていると言えそうだ。

 タカラガイは、「〇鋏族」とした。ホシダカラは微減で、ヤクシマダカラ、ハナマルユキ、ハナビラダカラは微増している。微増微減の範囲だが、ホシダカラよりは、ヤクシマダカラ、ハナマルユキの方が、表面の褐色が強く、ヤドカリに似ているとはいえる。ハナビラダカラが増えるのは、平滑で光沢のある背面とヤドカリ腹部との類似に依るのではないだろうか。

 円錐的で、円の方に殻口のあるのが、「△鋏族」。おおむね微減で、これは鋏の形の類似がカニのときより重視されなくなったのを示しているのかもしれない。サラサバテイラは減少するが、ニシキウズとギンタカハマは微増している。

 円錐を二つ重ねたような形のものが「△▽鋏族」。個々には微増微減だが、全体としては減少する。これは、クモガイ、スイジガイの減少によるところが大きい(特にクモガイ)。これは、形がカニそのものに似ていることに依ると思える。だが、その他もおおむね殻に尖りを持っていて、それはカニにしてもヤドカリにしても脚を持つことに呼応している。

 これは、尖りのみでまとめた「棘族」についても同様のことが言える。

 「陸族」は、マイマイなどで、オキナワヤマタニシ、バンダナマイマイ、カツレンマイマイ、シュリマイマイは、カツレンマイマイを除いて微増する。これは、ヤドカリが陸にも棲むことに依っている。

 「岩族」は、岩に張り付いて岩そのものに化しているように見えるものや、岩そのものに見えるものを入れている。しかし、微減しているメンガイは、むしろ放射肋族に入れるのがいいようだ。クロチョウガイもそれは同じかもしれない。

 まだ精緻さが足りないが、ヤドカリの場合、腹部(貝)がスベスベしていることが重視される。鋏は男性性を強めているとは言えそうだ。

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 これらを貝の棲息地の推移として見てみると、干潟-マングローブ域の減少が目立つ。これはあるいは、キバオウギガニなど、干潟に棲むオウギガニもトーテムだったことを示唆するのかもしれない。